データの保存管理に利用するITシステム「ファイルサーバー」。ExcelデータやPDFファイルなど、業務で使用するさまざまなデータを保存しておくための、いわば“箱”のようなものです。
そんなファイルサーバーですが、種類を大きく分けると「社内ファイルサーバー」と「クラウドストレージ」の2つに大別することができます。今回のコラム記事では、社内ファイルサーバーとクラウドストレージはどのように違うのか?について解説します。
目次
企業のファイル管理に欠かせない「ファイルサーバー」
企業は日々膨大な数のデータファイルを扱います。
見積書や契約書、プレゼン資料といったオフィス文書はもちろん、販売管理データをまとめたXLSXファイルや、建築やクリエイティブの仕事で使用する図面や画像のデータなど、挙げればきりがありません。
また最近では電子帳簿保存法の法改正が行われ、これまで紙で取り扱ってきた書類も原則電子ファイル化して保存しなければならなくなり、以前より企業がデータファイルを取り扱う機会は増加しています。
そして、こういったデータファイルの管理に欠かせないのが、「ファイルサーバー」です。
ファイルサーバーとは、データファイルの保管や社内でのファイル共有を行うために使われるコンピューターサーバーのことです。
ファイルサーバーの中には、WordやPowerPointなどで作成したオフィスドキュメントのほか、PDFファイルやJPEGの画像ファイル、設計関連の仕事でよく用いられるCADデータなど、あらゆるデータファイルを保存しておくことができます。
社内ファイルサーバーとクラウドストレージの2種類にわかれる
ファイルサーバーは「社内ファイルサーバー」と「クラウドストレージ」の2種類に分類することができます。
情報システム関連の業務を担当しており、ファイルサーバーについて深い関心をもっているという方の中には、それぞれの違いが気になる方も多いのではないでしょうか。
特にクラウドストレージは比較的新しいソリューションであるため、その概要についてまだあまり詳しくないという方もいるのではないかと思います。
次のパートからそれぞれの特徴についてみていきましょう。
社内ファイルサーバー|自社専用で使用
社内ファイルサーバーとは、自社専用で使用するファイルサーバーのことをいいます。オンプレミス型と呼ばれることも多く、基本的に社内環境からのみ使用することを想定した設計となっている点が特徴です。
社内ファイルサーバーの利用方法について、自社ビル内に物理的なコンピューターを設置してサーバーを構築する場合もあれば、データセンターの一部を自社専用のスペースとして間借りして使用するパターンもあります。
ファイルサーバーの特徴
・自社専用で使用する
・基本的に社内環境からのみ使用することを想定した設計である
ファイルサーバー=社内ファイルサーバーだった
従来、ファイルサーバーといえば社内ファイルサーバーを指すことが一般的でした。
しかし近年、のちに紹介するクラウドストレージが台頭してきたことで、ファイルサーバーの認識も改まりつつあります。
クラウドストレージを利用する企業の数が増え、GoogleドライブやiCloudドライブなど一般消費者向けのクラウドストレージサービスも徐々に普及していることから、従来のように「ファイルサーバーといえば、社内ファイルサーバーのことである」とはいえない状況になりつつあります。
事実、「クラウドストレージ利用実態調査2022」(*1)によると、7割以上の企業がクラウドストレージを導入しているという結果が報告されているそうです。
*1:Biz Clip調査レポート(第32回)クラウドストレージ利用実態調査2022
クラウドストレージ|提供されたものをネット経由で使用
クラウドストレージとは、ベンダー(サービス提供事業者)が提供するファイルストレージをインターネット経由で利用するクラウド型ファイルサーバーのことです。
特徴は、「インターネットを必ず使用すること」と、「ファイルサーバー自体のシステム管理者が、自分たちではなくベンダーであること」の2つが挙げられます。
クラウドストレージの特徴
・ベンダーが提供したものを使用する
・インターネットを必ず使用する
・システム管理者が自分たちではなくベンダーである
インターネットが必須
クラウドストレージを利用するためには、インターネット環境が必須です。ベンダーが提供するシステムを利用するために、端末をインターネットへ接続しなくてはならないためです。
社内ファイルサーバーは社内LANに接続できれば使えることが一般的ですが(むしろセキュリティのために社内LANからしか接続できないことも多い)、クラウドストレージはインターネットがなければシステムに接続できないので、インターネットが使えない環境では利用できません。
逆を言えば、利用にあたって必要となるものがインターネット環境と接続用の端末のみなので、それさえ揃えることができれば、「いつでも・どこからでも」、ファイルストレージを使うことができます。
システムの管理主体はベンダー
クラウドストレージは、システム自体の管理者がベンダーになります。そのためシステムに何か不具合があったときや、サービスに脆弱性の問題が見つかったときはベンダーが対応することになります。
一方の社内ファイルサーバーは自社専用に構築されたものであるため、システム自体の管理者も自社ということになります。
先ほど挙げたようなトラブルが起きた場合、クラウドストレージはベンダーが対応しますが、社内ファイルサーバーは自分たちで対応する必要があります。
情報システムの管理という点からみると、ベンダーにシステムの管理を任せられることは大きなメリットです。
以下の記事は、情報システム担当者へのインタビュー記事です。その中で、システムのメンテナンスをベンダーに任せられるメリットについて詳しく話している箇所があります。実際の事例からベンダーによるシステム管理の概要を知りたいという方は、ぜひ参考にされてみてください。
社内ファイルサーバーとクラウドストレージの3つの違い
社内ファイルサーバーとクラウドストレージの違いをまとめると、以下のようになります。
社内ファイルサーバー | クラウドストレージ |
---|---|
“自社専用”のファイルストレージである | “ベンダー提供”のファイルストレージである |
インターネットが必ずしも“必要ではない” | インターネットが必ず“必要” |
システムの管理者は“自分” | システムの管理者は“ベンダー” |
「専用か共用か」、「インターネットが必須か否か」、「システムの管理者が自分かどうか」、以上の3点が社内ファイルサーバーとクラウドストレージの大まかな違いです。
ファイルサーバーとしての基本的な機能は、どちらも変わりありません。データを保管しておくための“箱”としての機能を有しており、社内の人間が利用します。
補足:例外として、クラウドストレージはファイル転送システムとして社外の人間とファイル共有するために使用することがあります。
それぞれのメリットとデメリットを比較
ビジネスでファイルサーバーを利用する際、種類は社内ファイルサーバーとクラウドストレージのどちらを選ぶべきなのか。そのことを判断するためには、それぞれにどのようなメリットとデメリットがあるのかを考える必要があります。
社内ファイルサーバーとクラウドストレージのメリットとデメリットをまとめると、以下の通りになります。
社内ファイルサーバー | クラウドストレージ |
---|---|
【メリット】 ・カスタマイズ性に優れている ・クローズドな環境 | 【メリット】 ・アクセス面の柔軟性が高いこと ・運用管理をベンダーに任せられる |
【デメリット】 ・ファイルへのアクセスに制限がある ・運用管理に工数がかかる | 【デメリット】 ・カスタマイズ性に乏しい ・インターネット環境が必須 |
社内ファイルサーバーは自社専用に構築するため、カスタマイズ性に優れています。またクラウドストレージと違い環境が社内に限定されているので、情報漏えいが起こりにくい構造です。ただし、会社からしかアクセスできなかったり、サーバー管理に手間がかかったりというデメリットが懸念されます。
一方のクラウドストレージは、ネット環境があればいつでもどこからでも利用できるため、サーバーへのアクセス面で柔軟性が高いです。またシステムの運用管理をベンダーに一任できるので、情報システム部の管理負担も抑えられます。しかし、パッケージ化されていることが多いのでカスタマイズ性は低めです。加えてネット環境が必須なので、状況によっては使えない事態も想定されます。
このように社内ファイルサーバーとクラウドストレージは、それぞれに一長一短があります。長所と短所を比較して、どちらが自社の状況に合っているのかを考えることが重要です。
以下の記事では、より詳しくそれぞれの長所と短所を比較しています。ぜひ参考にしてください。
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