従来、ファイルサーバーはオンプレミス型が主流でしたが、現在はクラウドストレージを利用する企業が増えています。「クラウドストレージ利用実態調査2022」(*1)によると、7割以上の企業がクラウドストレージを導入しているという結果が報告されています。

データ共有が簡便などメリットも多いクラウドストレージですが、すでにオンプレミス型を利用している企業の場合、移行は簡単なことではありません。移行にあたっては検討すべき課題が数多く存在します。

そこでおすすめなのが「ハイブリッドクラウド」という考え方です。今回のコラムでは、オンプレミスとクラウドを上手に両立させて活用する「ハイブリッドクラウド」について解説します。

*1:Biz Clip調査レポート(第32回)クラウドストレージ利用実態調査2022

ファイルサーバーの種類はオンプレとクラウドの2つ

ファイルサーバーとは、ファイルを保管したり共有したりするためのITツールです。ファイルサーバーには、オフィス文書や制作データなどさまざまなファイルを保存することができます。

その他、関係者とのファイル共有のために使われることも多いです。共同で使用することで、サーバーに格納されたファイルを関係者全員が閲覧・編集することができます。

そんなファイルサーバーですが、オンプレミス型とクラウド型の2種類にわけることができます。それぞれの特徴をみていきましょう。

オンプレミス型

自社専用に構築されたファイルサーバーです

「社内サーバー」「共有サーバー」と呼ばれることもあります。カスタマイズ性に優れ、社内のみのクローズドな環境で運用できることが特長です。

一方で自社専用に構築するため、初期費用が高くなりがちな点が短所といえます。

クラウド型

インターネットを経由して利用するファイルサーバーです。「クラウドストレージ」「オンラインストレージ」と呼ばれることもあります。

クラウド型はサービス提供元のベンダーに、ファイルサーバーを借りる形で使用します。パッケージサービスのためオンプレミス型よりもカスタマイズ性に劣りますが、その分コストを抑えることができます。

またインターネットと接続デバイスさえあれば、いつでも・どこからでもシステムを使える点も特長のひとつです。

従来の主流はオンプレミス。現在はクラウド化が進行

これまではファイルサーバーはオンプレミス型が主流でした。それが、クラウドサービスの台頭によってファイルサーバーもクラウド化が進行し、現在は多くの企業がクラウドストレージを利用しています。

日経BPコンサルティングの調査レポート「クラウドストレージ利用実態調査2022」によると、約5割の企業がクラウドストレージを利用しており、従業員数が1万人以上の大企業にいたっては、クラウドストレージの利用率は7割以上にものぼります(図1)。

Biz Clip調査レポート(第32回)クラウドストレージ利用実態調査2022のデータを参考に筆者が作成したグラフ図
図1

出典:Biz Clip調査レポート(第32回)クラウドストレージ利用実態調査2022

クラウドストレージのメリット「遠隔利用・コスト」

企業の間でクラウドストレージの利用が進んでいる理由の1つに、クラウドストレージを利用することで以下のメリットを得られる点が挙げられます。

  • 遠隔利用ができる(社外からアクセスできる)
  • コスト面で導入しやすいこと

まず1つ目の「遠隔利用」について、クラウドストレージはインターネットと接続デバイスさえあれば、いつでもどこからでもシステムにアクセスしてファイル操作が行えます。

オンプレミス型ファイルサーバーの場合、社外からアクセスできないことが多く、可能にするためにはVPN設定などが必要となり、対応に手間がかかります。

クラウド化することで、営業車両の中や取引先のオフィスなど遠隔地からでもファイル操作ができるようになり、業務を進めやすくなります。

2つ目の「コスト」について、クラウドストレージは必要な分だけをベンダーから借りて利用するので、コストが抑えられます。ハードウェア購入やサーバー構築が不要なので、オンプレミス型と比べて初期費用も安価です。

したがってコスト面のハードルが低く、企業にとっては導入がしやすいといえます。オンプレミス型だと導入が難しいという企業も、クラウドストレージなら導入できる可能性があるでしょう。

しかしオンプレからクラウドへの移行は簡単ではない

これまで見たきたように、多くの企業がクラウドストレージの利用を進めており、メリットも明確です。しかし、すでにオンプレミス型のファイルサーバーを利用している企業の場合、移行はそう簡単ではありません

ここでは、移行に関する大きな2つの問題についてみてみましょう。

セキュリティポリシーへの適格性

まず、セキュリティポリシーへの適格性があるかどうかが問題となります。クラウドストレージは基本的にパブリックネットワークです。

極秘文書などの取り扱いについて、パブリックネットワークを使うことが会社として可能かどうか、確認が必要です。

また機密性の高い情報を、社外のサーバーに預けてよいのかどうかについても、検討が必要となるでしょう。場合によっては、セキュリティポリシーに不適格と判断されてしまう可能性もゼロではありません。

基幹システムに関する問題

次に挙げられるのが、基幹システムに関する問題です。オンプレミスのサーバー内に基幹システムを構築している場合、それをそのままクラウドに移行することは困難です。

そのため、別途ツールを導入して基幹システムの再構築を行う必要があります。基幹システムは文字通り会社のインフラをシステム面で支えるツールです。再構築には相応の負担がかかり、そう簡単に対処できる問題ではないため、移行の高いハードルとなっています。

移行課題を解決する「ハイブリッドクラウド」という考え方

ハイブリッドクラウドのイメージを図式化した画像

先に挙げた移行課題の解決に効果が期待できるのが「ハイブリッドクラウド」です。

ハイブリッドクラウドとは、ITツールの活用手法のひとつ。オンプレミスとクラウドを組み合わせることで、互いの短所を補い合い、全体のメリットを最大化させることができます。

つまり、オンプレミスとクラウドの「いいとこ取り」をすること。それがハイブリッドクラウドの基本的な考え方です。

ファイルサーバーのハイブリッドクラウド化

移行における課題として、「セキュリティポリシーの適格性」や「基幹システムの問題」が挙げられました。

オンプレミスとクラウドそれぞれの対応領域を区分し、ハイブリッド化することでこれらの課題も解決が見込めます。

次のパートからハイブリッド化の概要を解説します。

日常で使うものはクラウドストレージ、機密性の高いものはオンプレミス

まず大まかにですが、

  • 日常業務に関するファイルはクラウドストレージ
  • 機密性の高い情報や基幹システムはオンプレミス

といったようにそれぞれの役割・使い方を区分します。

ポイントは日常業務への影響度情報の機密性を尺度に、そのファイルを管理するサーバーを選択することです。

ファイルの取り扱いに関する制限が少なくなるほど、基本的に業務はやりやすくなります。

たとえばクラウドストレージでどこからでもサーバーにアクセスできるようになれば、社外環境からファイルを参照・操作できるようになるので、仕事を進めやすくなるでしょう。

一方で制限が増えるほど、情報を持ち出しにくくなるので、業務を進めにくくなります。その代わり、セキュリティが高まります。

クラウドストレージで制限を少なくして業務効率を上げる

制限が少ないのはクラウドストレージであり、厳しいのはオンプレミスです。

日常業務への影響度が高いようなファイル(たとえば提案資料など)をオンプレミスで管理すると、普段の業務でファイルを利用しにくくなり、全体の業務効率が低下してしまいます。

だからそのようなファイルはクラウドストレージで管理するのがおすすめです。そうすることで、業務効率のアップを図ることができます

オンプレミスのクローズドな環境という長所を活かす

情報の機密性も重要な尺度です。

セキュリティポリシーの内容によっては、機密性の高いファイル(たとえば重要文書など)をクラウドストレージのパブリックネットワークで管理できない場合もあります。

その場合は、オンプレミスのクローズドな環境を活かして運用するのが好適といえるでしょう。

反対に情報の機密性が低く、日常でよく使われるような種類のファイルは、クラウドストレージで運用します。

そうすることで、オンプレミスとクラウドの両方の長所を活かすことができます

基幹システムを無理に替えない

基幹システムの入れ替えは負担の大きな作業です。無理に行わず、オンプレミスのサーバーで引き続き運用していくのがよいでしょう。

ハイブリッドクラウドでファイル管理をアップデート

ハイブリッドクラウドを活用することで、オンプレミスからクラウドストレージへの移行におけるさまざまな課題を解決することができます。

互いの長所を活かすことで、ファイル管理がアップデートされ、セキュリティを維持したまま業務効率をアップさせることが可能です。

「クラウドストレージを活用して組織の生産性を高めたいけど、移行面で懸念がある」という方は、ぜひハイブリッドクラウドの活用を検討されてみてください。

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