社内で扱うデータファイルの保管や共有に使用するファイルサーバー。その種類は「社内ファイルサーバー」と「クラウドストレージ」の2つに分けられます。

今回のコラムでは、それぞれの違いについて解説。「どのようなところに長所と短所があるのか」、「セキュリティとコストはどのように違うのか」などのポイントから両者を徹底的に比較していきます。

「ファイルサーバーとしてどちらを選ぶべきなのか悩んでいる」「クラウドストレージに興味があるけど社内ファイルサーバーとの違いを知りたい」という方はぜひ参考にしてください。

社内ファイルサーバーの長所

社内ファイルサーバーとは、自社専用に構築されたファイルサーバーのことです。オンプレミス型と呼ばれることもあります。社内ファイルサーバーの長所は、大きく分けて「カスタマイズ性に優れていること」と「クローズドな環境で使えること」の2つです。

長所①カスタマイズ性に優れていること

社内ファイルサーバーは、自社専用のファイルサーバーとしてシステムを構築します。そのためセキュリティの設定や使用ハードディスクについて、自社の状況に合わせて柔軟にカスタマイズしたり機器構成を選択できます。

長所②クローズドな環境

社内ファイルサーバーは基本的に社外からアクセスができない作りになっています。ファイル管理の構造上、情報が外部に漏れにくい設計となっているため、クローズドな環境としてセキュリティ面で安心感があります。加えてカスタマイズによってアクセス制限などのセキュリティ機能を実装することも可能です。

社内ファイルサーバーの短所

社内ファイルサーバーの短所としては、大きく分けて「ファイルへのアクセス制限」と「運用管理に工数がかかること」の2つが考えられます。

短所①ファイルへのアクセスに制限がある

社内ファイルサーバーは、ファイルへのアクセスに関して一定の制限を受けてしまうことがあります。たとえば、「社内LANに繋がないとストレージにアクセスできない」「ストレージ内のファイルを編集するとき、複数のユーザーが同時にアクセスできない」などの制限が挙げられます。

営業や現場監督など社外での活動(モバイルワーク)が多い職種の場合、その都度会社に戻らなければならないことは業務生産性の観点から見ると非効率的です。

また同時にアクセスができない点も、ファイルの閲覧や編集において個別でしか作業が行えず、順番待ちの時間が発生が発生するため、細かい部分ですが業務上のデメリットとなりえるでしょう。

短所②運用管理に工数がかかる

もう1つのデメリットは、運用管理に大きな工数がかかる点です。サーバーメンテナンスや災害時の復旧対応といったシステムの維持管理について、社内ファイルサーバーは自社で対応する必要があります。

当然故障のリスクも自社で負わなくてはならず、システムの総合的な管理には高度な知識が必要とされるため、場合によっては専門人材の配置が求められるケースもあるでしょう。

クラウドストレージの長所

クラウドストレージとは、インターネットを介して利用するファイルストレージです。社内ファイルサーバーのように自社専用で設けるものではなく、システムの提供会社であるベンダーと契約してファイルサーバーを使用します。

クラウドストレージの長所は、「アクセス面の柔軟性が高いこと」と「運用管理をベンダーに任せられること」の2つが挙げられます。

長所①アクセス面の柔軟性が高いこと

クラウドストレージはインターネットとネット接続可能なデジタルデバイスさえあれば、「いつでも・どこからでも」、ファイルストレージを利用することができます。

そのため社外の環境にいても、ファイルサーバーにアクセスしてファイルの閲覧やダウンロードといった操作が可能です。ファイル共有に関する業務の効率化、および業務のスピードアップが見込めます。

またこういったアクセス面での柔軟性の高さは、働き方改革への対応といった面でもプラスの働きが期待できます。

たとえばテレワークを実施するためには、自宅やサテライトオフィスといった社外環境からアクセスできるファイルサーバーが必要です。それがなければ、離れた場所にいる従業員同士が必要なファイル共有を行えず、業務連携にあたって支障をきたす恐れがあります。

クラウドストレージであれば「いつでも・どこからでも」利用することができるので、モバイルワークや在宅勤務などの働き方に対して柔軟かつスピーディに対応することが可能です。

長所②運用管理をベンダーに任せられる

挙げられる2つ目の長所は、サーバーの運用管理をベンダーに任せられる点です。社内ファイルサーバーの短所でも触れた通り、ファイルサーバーの自社運用には高度な知識と人的リソースが求められるため、専門人材の配置が必要なケースも少なくありません。

その点クラウドストレージは、ベンダーが提供しているシステムをインターネット経由で借りて利用しているという図式なので、システムの運用管理は全てベンダーに任せることができます。

脆弱性に対するアップデートや自然災害リスクへの対応、ハードディスクの故障など、サーバー運用に伴うさまざまな管理をベンダーにまるっと任せられる点は、ファイルサーバーの運用管理における社内負担の軽減といった面で大きなメリットといえるでしょう。

クラウドストレージの短所

クラウドストレージの短所としては、2つのことが挙げられます。1つは「カスタマイズ性に乏しいこと」、もうひとつは「インターネット環境が必須であること」です。

短所①カスタマイズ性に乏しい

一般的にクラウドストレージは、社内ファイルサーバーほど大幅なカスタマイズを行うことができません。あくまでも、ベンダーが提供するシステムを借りて使用しているに過ぎないためです。

パッケージ内で設定関連のカスタマイズを行うことは可能ですが、自社専用のファイルサーバーとして構築する社内ファイルサーバーと比較すると、その範囲や自由度は劣る傾向にあります。そのため希望する条件によっては、合致するサービスが市場で提供されていない場合もあります。

短所②インターネット環境が必須

またインターネットがなければ使えない点もクラウドストレージの短所といえます。インターネットのない環境や、ネットワークトラブルなどによりインターネットに繋がらなくなってしまった場合、ファイルストレージにアクセスすることができず、業務が滞ってしまう恐れがあります。

セキュリティの比較

前のパートではそれぞれの長所と短所を比較してみました。続いて、社内ファイルサーバーとクラウドストレージの「セキュリティ」について比較していきます。

結論:一概に判断することは難しい

まず結論として、社内ファイルサーバーとクラウドストレージ、どちらのセキュリティが優れているかを一概に判断することは難しいということがいえます。

なぜなら、ファイルサーバーの利用や運用において懸念されるセキュリティリスクは多岐にわたり、それらの対処に関する機能や対策は、ある種トレードオフのような関係にあるためです。

社内ファイルサーバーのセキュリティ

社内ファイルサーバーは社内というクローズドな環境で運用するため、情報が外部に漏れるリスクは比較的低いといえます。自由にカスタマイズが行えるので、自社のセキュリティポリシーに合わせた運用も実現可能です。

しかし一方で、災害リスクに対して自社で対応しなくてはならず、それを生業とするベンダーのような専門的かつ包括的な対策は難易度が高いため、防災という観点からみたときのセキュリティリスクは高まりやすい傾向にあるといえます。

クラウドストレージのセキュリティ

クラウドストレージは「インターネットに接続できれば、いつでも・どこからでも利用できる」という利便性の高さと引き換えに、インターネットを介したさまざまなセキュリティリスクと対峙することを義務付けられます。マルウェア感染や不正アクセスといったサイバー攻撃に対して防御策を講じる必要があるのです。

ただし、そのことはデメリットばかりではありません。これらのセキュリティリスクに対して、ベンダーは常日頃から対策を検討・実施しているため、ユーザーは契約期間中ずっと最新のセキュリティ対策を施されたシステムを利用できます。

社内ファイルサーバーの場合、脆弱性に関するアップデートやセキュリティ維持のための新機能搭載は、ユーザー自身が能動的に動いて対応していかなくてはいけません。

つまりクラウドストレージは、インターネットを活用することでセキュリティリスクへの対策を義務付けられると同時に、ベンダーが提供する最新のセキュリティを利用できるメリットも享受できるというわけです。

条件や予算に合わせて適するほうを選択

社内ファイルサーバーとクラウドストレージのセキュリティは、一概にどちらが優れていると決定づけることは難しいといえます。その内部にトレードオフ的な構造をもっているためです。

したがって、希望するセキュリティ条件の優先度や、予算に合わせて適するものを選択するのがよいといえます。

たとえば、自社のセキュリティポリシーが非常に厳しく、外部との接続を徹底的に断つ必要がある場合は、オンプレミスで構築できる社内ファイルサーバーが好適です。災害リスクが懸念されますが、外部との遮断を優先するのであればある程度許容する必要がありますし、予算を投下すれば防災対策のレベルも一定以上まで引き上げることができます。

常に最新のセキュリティを利用できる点や災害観点のセキュリティリスクに強いことに魅力を感じるのであれば、クラウドストレージのほうが適しているでしょう。パッケージ化されている分、自社の運用にそぐわない部分が出てくる可能性もありますが、もしもセキュリティポリシー上問題がないのであれば、パッケージ化による価格面や運用面のメリットをデメリットなしで受けとることができます。

コストの比較

コスト面に関しては、傾向として「社内ファイルサーバーのほうが高価格になりがち」であることがいえます。その会社専用のファイルサーバーとしてシステムを構築するためです。カスタマイズの自由が効く分、コストも高くなりやすい傾向にあります。

社内ファイルサーバーはイニシャルコストがかかる

社内ファイルサーバーのコストの内訳の中でも、「イニシャルコストがかかる点」は特に留意しておきたいポイントです。物理的なサーバー設置が必要なので、どうしても導入段階で費用がかかってしまいます。

具体的にいうと、「サーバー本体(ハードウェア)」や「サーバー稼働に必要な周辺機器」といった端末の準備代金がかかるほか、「ソフトウェアのインストール」や「ネットワーク設定」といった設定関連の費用がかかります。

サーバーのスペックや想定ユーザー数によって金額は大きく前後し、数十万円から構築できる場合もあれば、一千万円を超えるようなケースもあります。

いずれにおいても、端末の準備やシステムのインストール設定などに費用がかかるため、それらを借りる形で利用するクラウドストレージに比べるとイニシャルでかかるコストは高くなりがちです。

またクラウドストレージは多くのサービスが月額支払いのサブスクリプション形式を採用しており、サービスによっては初期費用なしというものもあります。

ランニングコストはプランや保守の内容で前後

ランニングコストに関しては、クラウドストレージはシステム利用料がかかり、社内ファイルサーバーは運用保守に費用がかかる場合があります。

それぞれの具体的な費用はサービスのプランや保守の内容によって変わるため、一概にどちらが安価であるとはいえません。ただし、社内ファイルサーバーはハードウェアが故障した場合、取り替えなくてはいけないので、端末管理において不規則な出費が発生する可能性があることを念頭に置く必要はあるでしょう。

【結論】社内ファイルサーバーとクラウドストレージのどちらがよいかは、総合的にみて判断しよう

結論としては、「社内ファイルサーバーとクラウドストレージは、どちらも一長一短であるため、総合的にみてどちらがよいのかを判断することが望ましい」といえます。

たとえば「アクセスの柔軟性」と「イニシャルコストが安価に抑えられる点」に魅力を感じるのであれば、クラウドストレージのほうが適しているでしょう。

一方、セキュリティポリシーの関係上、「カスタマイズ性の高さ」や「社外との断絶(クローズドな環境)」に重点が置かれるのであれば、社内ファイルサーバーのほうが希望条件を満たせる可能性が高いといえます。

結果的にどちらを選択するにしても、検討の段階で大切なことは「何を重視すべきか」という指標を持つことです。

業務効率化のためにアクセスの柔軟性を重視するのか。セキュリティ維持のためにクローズドな環境を重視するのか。イニシャルコストの安さや運用面の手軽さを重視するのか。

ただ単にそれぞれを比較しても各々の特徴が見えてくるだけです。「自分たちにとって何が重要なのか」という指標がなければ、「社内ファイルサーバーとクラウドストレージのどちらがよいのか」を判断することは難しいといえます。

会社として特に重視すべきポイントはどこの部分なのか、各要素を総合的に理解したうえで会社としての指標を持ち、最もバランスの取れる形を選択するのがよいでしょう。

ハイブリッドという選択肢もある

社内ファイルサーバーとクラウドストレージは併用が可能です。たとえば機密情報に関するファイルは社内ファイルサーバーで管理し、日常の業務で扱うファイルは業務効率化のためにクラウドストレージを使う、といった「ハイブリッド運用」も選択肢として選ぶことができます。

コストが二重に発生する懸念がありますが、用途に応じて契約内容やユーザー数を調節し、しっかりと棲み分けを行えば、ツール重複による無駄なコスト増加は防止できます。

実際、テレワークへの対応のために、以前から使っている社内ファイルサーバーの運用は据え置きとして、部分的にクラウドストレージを導入するといった企業は増えているようです。

キーマンズネットの調査では「ファイルサーバーとクラウドストレージを併用している」と回答した企業は2021年から2022年にかけて10ポイント近く上昇しています*1。

*1 ファイルサーバとクラウドストレージの利用状況(2022年)/前編

クラウドストレージの「アクセスの柔軟性」は、モバイルワークや在宅勤務といった働き方に対して高い効果が期待できます。必要に応じてハイブリッドな運用も選択肢として検討されてみるのがよいでしょう。

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