地震や豪雨など自然災害が多く発生する日本において、BCP対策を強化することは企業の存続を左右する重要な取り組みです。
BCP対策の取り組みにはさまざまな種類がありますが、ファイルサーバーの適切な運用もその取り組みのひとつ。適切な運用環境を構築することでデータの保全性が高まり、企業の情報資産を守ることに繋がります。
ファイルサーバーの運用手段としておすすめなのが、クラウドストレージを活用した方法です。
今回のコラムでは、BCP対策の観点からクラウドストレージの活用が有効な4つの理由や、オンプレミス型ファイルサーバーによる運用のリスクなどについて解説します。
会社のBCP対策についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
BCP対策(事業継続計画)とは
BCP対策とは、自然災害や感染症拡大など緊急事態の発生によって、事業が何らかのダメージを受けてしまったとき、その被害をなるべく小さくし、事業の操業率を速やかに回復させるためのさまざまな取り組みを指す言葉です。
事業の継続性を確保するという意味合いも含まれており、BCP対策は「事業継続計画」と言い換えられることもあります。例えば、従業員の安否確認体制を整備することは、BCP対策の代表例です。
BCP対策とファイルサーバーの関係性
BCP対策と、ファイルサーバーはどのような関係があるのでしょうか。
まずBCP対策において守るべき資源は、「人・モノ・金・情報」の4つに分類されます。
BCP対策で守るべき資源
・人
・モノ
・金
・情報
そして守るべき資源に応じて、取り組みの内容が異なります。
例えば、「人」という資源を守るためには、従業員の安否確認体制を構築する取り組みが必要です。また「金」という資源を守るためには、日ごろから財務状況を整理し、緊急事態においても使えるお金を確保しておくための取り組みが必要となります。
このように、BCP対策は資源の種類に応じて行うべき取り組みが変わります。
企業にとってファイルサーバーに保存されているデータは、それまでの活動を蓄積してきた貴重な財産であり、情報資産です。
BCP対策上の分類では、これらのデータは「情報」の資源に分類されます。
つまり、ファイルサーバーは、BCP対策における情報資源の確保にかかわるツールであるということです。
したがって、BCP対策を検討する上では、情報資源の確保にかかわるファイルサーバーの運用についても、きちんと考えなければならないといえます。
BCP対策の観点からファイルサーバーの運用を考え、データの保全性を高めることで、情報資源の確保につながるからです。
BCP対策でオンプレミス型ファイルサーバーが抱える3つのリスク
情報資源の確保という観点からBCP対策の強化を進めるためには、ファイルサーバーを適切な形で運用することが重要です。
ファイルサーバーには大きく分けて2つの種類があります。
ファイルサーバーの種類
①オンプレミス型
②クラウド型
1つは自社専用にサーバーを構築する「オンプレミス型」。もう1つは、ベンダーが提供するファイルサーバーをクラウド経由で利用する「クラウド型」です。
これまではオンプレミス型のファイルサーバーが主流でした。
オンプレミス型は自社専用で構築するため、「カスタマイズ性に優れている」、「完全クローズドな環境で情報を守ることができる」などの利点があります。
▼オンプレミス型とクラウド型の違いを詳しく知りたい方はこちら
しかし一方で、BCP対策の観点からみると、オンプレミス型には、運用上いくつかのリスクが懸念されます。
その中でも特に注意しておきたいものが、以下の3つです。
- 災害に弱く、データ消失のリスクがある
- システム運用の難易度が高く、有事の際に対応できる人材が限られる
- 多額のコストがかかる
それぞれを解説します。
リスク①災害に弱く、データ消失のリスクがある
オンプレミス型のファイルサーバーは、自社で運用や保守を行っていかなくてはなりません。
そのため、災害への対策も自社で検討する必要があります。
例えば、自社ビルのどこかにサーバールームを置いている場合、そこが地震などによって物損などの被害を受けると、ファイルサーバーの機能は停止してしまいます。
そうならないように、ハードウェアの保護やデータのバックアップなどの対策を自社で実施していく必要があるのです。
とはいえ、あらゆる災害に耐えられるハイレベルな対策を一企業として行うのは難しいものです。
大規模災害に見舞われた場合、サーバー自体が損傷し、データが消失してしまう可能性は比較的高いといえるでしょう。
リスク②システム運用の難易度が高く、有事の際に対応できる人材が限られる
サーバーを管理・運用するためには、専門知識を持った人材の配置が必要です。
普段はその担当者がトラブルに対応してくれるので、大きな問題が起こることは少ないでしょう。
問題が起こるのは、緊急事態が発生したときです。
その担当者が怪我などの理由で動けなくなった場合、ファイルサーバーに関するあらゆる対応が滞ってしまいます。
最悪の場合、復旧が間に合わず、サーバー内の全データが消失してしまう恐れもあるでしょう。
このように有事の際に対応できる人材が限られてしまうことは、結果としてファイルサーバーのデータの保全性を低めてしまう要因となり得ます。
リスク③多額のコストがかかる
オンプレミス型のファイルサーバーは、運用や初期構築に多額の費用が必要となります。理由は、サーバーを自社専用で構築するからです。
サービスとしてパッケージ化されたパブリック型のクラウドシステムに比べて、自社専用システムとしてカスタマイズを施すことになるため、コストが高くなりやすい傾向にあります。
初期費用に関しては、クラウドサービスは無料の場合も多いですが、オンプレミスだと数百万円を超えるケースも珍しくありません。
さらに、機器が故障したときには部品を取り替えなくてはならず、備品代もランニングコストとしてかかります。
当然ですが、企業の活動資金は無限ではありません。
ファイルサーバーの運用や保守に多額の費用を充てた場合、その他の重要なBCP対策の取り組みに予算を回すことができず、十分な災害対策を実行できなくなる恐れがあるのです。
全体の予算配分を最適化することは、結果としてBCP対策の強化に繋がります。したがって、多額のコストがかかるオンプレミス型の運用は、予算配分の最適化において負担となる可能性が高いといえるでしょう。
BCP対策の強化には「クラウドストレージ」が有効|4つの理由
ファイルサーバーの視点からBCP対策の強化を図るのであれば、クラウドストレージの活用が有効です。
その理由は大きく分けて4つ挙げられます。
- 強力な災害対策が施されたベンダーの設備環境を利用できる
- 社外環境からサーバーにアクセスでき、災害時も業務を進めやすい
- システム運用をベンダーに任せることができる
- データのバックアップを自動的に取得できる
それぞれについて、簡単に解説します。
①強力な災害対策が施されたベンダーの設備環境を利用できる
1つ目は、強力な災害対策が施されたベンダーの設備環境を利用できることです。
クラウドストレージの提供ベンダーは、データの保存場所であるデータセンターについて、巨額の費用を投じてさまざまな角度から災害対策を実施しています。
自社運用のオンプレミス型でベンダーと同様の設備環境を構築することは、予算的にも技術的にも困難です。
クラウドストレージなら、ベンダーと契約するだけで、高水準の災害対策が施された設備環境を利用できます。
②システム運用をベンダーに任せることができる
2つ目は、システム運用をベンダーに任せられることです。
ファイルサーバーのシステム運用には専門知識が求められます。場合によっては専門人材の配置が必要なケースもあるでしょう。
運用が属人化すると、有事の際に対応できる人材が限られるといった問題もでてきます。
クラウドストレージであれば、サーバーのシステム自体の運用や保守はベンダーが担います。そのため、利用者側は、サーバーそのものの運用や保守について憂慮する必要がありません。
災害発生時、担当者が直接サーバールームへ赴いて復旧対応をすることも不要になります。
③社外環境からサーバーにアクセスでき、災害時も業務を進めやすい
3つ目は、社外環境からサーバーにアクセスでき、災害時も業務を進めやすいことです。
クラウドストレージはインターネットと接続デバイスさえあれば、いつでも・どこからでも利用できます。
オンプレミス型の場合、社外環境からサーバーにアクセスできないことが多いため、災害やパンデミックによって出社困難となった場合、ファイルサーバーにアクセスして業務を進めることができなくなります。
クラウドストレージであれば、社外環境からでもサーバーにアクセスできるので、オフィスにいけないような状況でも業務を進めることができます。
④データのバックアップを自動的に取得できる
4つ目は、データのバックアップを自動的に取得できることです。クラウドストレージでは、自動でデータのバックアップが取得されています。
オンプレミス型のファイルサーバーの場合、バックアップの取得は自分たちでおこなわなくてはいけません。バックアップ用の専用システムを導入するか、一定のサイクルで手動でデータをコピーし、別の保存機器に保管しておくかといった取り組みが必要となります。いずれにしても対応するために追加の費用や新たな人手を必要とするため、金やヒトの資源が消費されてしまいます。
その点、クラウドストレージであれば、提供企業側でデータのバックアップを取得してくれているため、利用者側でバックアップを取る必要がありません。
また提供企業はデータの管理拠点であるデータセンターを複数に分け、データの保全性を高めています。1つのデータセンターが被災しても、無事であったもう一方のデータセンターが稼働する体制を敷いているため、データ消失のリスクも非常に小さいです。
このようにバックアップを自動的に取得でき、かつ提供企業のセキュリティ対策を享受できることで、BCP対策において重要な情報資源を保護するための活動を効率よく強化できます。
クラウドストレージでBCP対策を強化!ファイルサーバーを適切に運用
BCP対策を強化するためには、ファイルサーバーを適切な方法で運用することが重要です。そうすることでデータの保全性が高まり、4つの資源の1つである「情報資産」を保護することに繋がります。
ファイルサーバーには、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。BCP対策の強化といった視点からみると、後者のクラウド型を活用するのがおすすめです。
理由は、災害対策やシステム運用の面からベンダーの強力なサポートを受けることができるからです。
また社外環境からサーバーにアクセスできるので、オフィスに出社することが困難な状況でも、各従業員が業務を進められます。
業務が滞らないことで事業の操業率の低下を最小限に抑えられ、事業を速やかに立て直すことができます。
BCP対策の強化にあたり、ファイルサーバーの運用方法の見直しを検討されているという企業は、クラウドストレージの活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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