今回のコラムは、社内取材企画です。「情シス座談会」と称して、社内の情報システム担当者に、WPS Cloud Proに関するさまざまな質問を投げかけてみました。

自社製品であるクラウド型オフィスソフト「WPS Cloud Pro」について、ITシステムの専門家である情報システム担当者はどのような印象や感想を持っているのか。

類似サービスと比べたときの特長や、無料の個人版クラウドストレージサービスとの比較、おすすめしたい企業などについて聞きました。

本コラムは前編と後編にわかれております。本記事は前編です。後編はこちらの記事になります。

※ワウテック株式会社は2023年9月1日にグループ会社であるキングソフト株式会社と合併いたしました。所属や役職は取材時点の情報です。

【情シス座談会】忖度なしの率直な意見を聞いてみた

情報システム部門は、社内で利用するITシステムの管理・運用を担当しているチームです。ITシステムの新規導入時には、候補となるサービスの選定や評価も担当します。

今回の企画では、社内の情報システム担当者に「もしも自分がWPS Cloud Proの導入担当者だったら?」という視点から、さまざまな質問に回答していただきました。

ITシステム運用の専門家である情報システム担当者は、WPS Cloud Proをどのように評価したのか? “忖度なし”の率直な意見をお話しいただきました。

質問リスト

  • オフィススイートの類似サービスと比較したときの特長は?
  • クラウドストレージ機能の特長は?
  • WPS Cloud Proをバックアップツールとして使うことはできる?
  • 個人版クラウドストレージと比較したときのメリット・デメリット
  • オンプレミスと比較したときの長所は?
  • WPS Cloud Proはどのような企業におすすめ?
  • もしも社長にオンプレミスに戻すよう指示されたら?

プロフィール

今回の「情シス座談会」は、ワウテック株式会社とキングソフト株式会社のそれぞれから1名ずつご参加いただきました。両名のプロフィールは以下の通りです。

ワウテック Kさん

情報システム歴約5年。ワウテック社内の情報システム業務を一手に引き受ける。PC設定やインシデント管理のほか、情報セキュリティマネジメントの国際標準規格「ISMS」の取得などにも対応。情報システム管理について幅広い業務を担う。ワウテック社内では“美食家”としても知られており、“予約待ち数年”のレストランの予約券も保有している。

キングソフト Mさん

情報システム歴約6年。キングソフトには新卒5期生として入社し、現在は人事総務Divに所属。キングソフト社内の情報システム業務を担当し、利用しているクラウドサービスの運用や一部オンプレミスサーバーの管理もおこなっている。シリアスになりがちなIT関連の社内対応依頼も、爽やかな笑顔で軽やかに乗り切る。千葉ロッテマリーンズのファン。

特長はデスクトップアプリが使えること。メーラーは他サービスで代用の必要あり

——WPS Cloud Proをオフィススイートとしてみたとき、「Microsoft 365」や「GoogleWorkspace」などの類似サービスと比較して、どのような点が特長といえますか?


キングソフト M

デスクトップアプリでオフィスソフトが使える点は特長だと思います。GoogleWorkspaceはブラウザベースなので、デスクトップアプリがないんですよね。

WPS Cloud Pro デスクトップアプリ 文書作成ソフト エディタ画面

キングソフト社内ではMicrosoft 365とGoogleWorkspaceの両方を契約していますが、実業務でGoogleのスプレッドシートを利用している従業員はほとんどいません。

理由はブラウザだと作業がやりにくいためです。ほとんどの従業員がデスクトップアプリのオフィスソフトを使って業務にあたっています。

WPS Cloud ProはWebブラウザとデスクトップアプリの両方が使えるので、必要に応じて利用環境を選択できます。その点は、従業員が利用しやすいIT環境を整えるうえでありがたいポイントですね。


ワウテック K

Mさんがおっしゃる通り、ローカル環境で使える点は長所だと思います。従業員の特性や業務の性質に合わせて、ハイブリッドな運用が構築できます。


キングソフト M

またオフィスソフトに限らず、GoogleWorkspaceのクラウドストレージ(Googleドライブ)についても、ブラウザで使う従業員はほとんどいません。

みんなローカルのデスクトップにGoogleドライブのアプリをインストールして、Windowsのエクスプローラーと同じように使用しています。

WPS Cloud Proがあれば、Googleドライブに保存されたオフィスファイルも、エクスプローラーからそのままデスクトップアプリで開けます。GoogleWorkspaceと併用する場合でも、ローカルでのオフィスソフト環境を維持できるんです。

ローカルにインストールされたGoogleドライブから、DOCXファイルをWPSデスクトップアプリで開くとき

デスクトップアプリでのオフィスソフト利用に慣れている従業員も多いので、このように柔軟に利用環境を整えられるのは長所だと感じます。

——Microsoft 365もデスクトップアプリを使うことができます。Microsoft 365と比較した場合、どのような部分が特長といえますか?


ワウテック K

コストですね。ID単価が月額300円(税抜)というのは、他のオフィススイートと比較してかなりリーズナブルだと思います。

Microsoft 365もデスクトップアプリを使えますが、プランによって異なるんです。例えば一般法人向けプランの「Microsoft 365 Business Basic」は、デスクトップアプリが使えません。それ以上のプランにアップグレードする必要があります。

WPS Cloud Proは1プランですべての機能が使えるので、そのシンプルさもサービス選定時にはありがたいポイントですね。

——反対に惜しいポイントがあるとすれば、それはどの部分になりますか?


ワウテック K

メーラーがないことですね。Microsoft 365やGoogleWorkspaceであれば、単体でメーラーまでカバーできます。

WPS Cloud Proはオフィスソフトとクラウドストレージに特化したサービスなので、メーラーの部分は代わりのITシステムを探す必要があるかと思います。実際、ワウテックでもGoogleWorkspaceとWPS Cloud Proを併用しており、メインのメーラーはGmailを使用しています。

クラウドストレージ機能の特長は“UI”と“セキュリティ水準の高さ”。他サービスと併用しやすい点もメリット

——WPS Cloud Proのクラウドストレージ機能について聞かせてください。特長をあげるとしたら、どのような部分になりますか?


キングソフト M

UIが使いやすい点は特長だと思います。直感的に操作できますし、ユーザー作成なども簡単です。

加えて、セキュリティがしっかりしていることもポイントだと思います。ログ検索機能や、共有リンクへの有効期限設定機能など、さまざまなセキュリティ機能が搭載されています。

さらにIP制限やデバイス制限といったアクセス管理系のコントロールも管理者側で設定できるので、法人利用で一般的に必要とされるセキュリティ水準はクリアしているのではないでしょうか。


ワウテック K

システム内の操作権限を任意のグループごとに細かく設定できることも、セキュリティに関する特長的な機能のひとつですね。

ちょっと複雑なのですが、WPS Cloud Proの管理機能には「ロール」という概念があります。ロールとは「特定のグループ」のようなもので、「部署」とはまた別の概念です。

ロールは自由に作成することができ、そこに任意のメンバーをあてがうことができます。

例えば、「サブ管理者」という名称のロールを作成し、そこに各部署のマネージャーを追加したりすることができます。

そしてWPS Cloud Proの管理機能では、ロールごとにシステム内の操作権限を細かく設定することができるんです。

例えば、「サブ管理者」というロールには、「ログレポートを抽出する権限」は与えるけど、「ストレージを振り分ける権限」は与えないといったことができます。

この場合、サブ管理者のロールに所属するメンバーは、ログレポートに関する操作の権限はもっていますが、ストレージの分配に関する権限は所有していないことになります。

このようなイメージで、WPS Cloud Proでは、システム内の操作権限を任意のグループやメンバーごとに振り分けることができるんです。

つまり、「システム管理者を複数たてられる」ということですね。

権限を振り分けることでシステムの属人的な運用を防止でき、より安全にシステムを管理できるようになります。

——なるほど。サブ管理者がたてられるのは、業務負担の分散という観点からも効果が期待できそうですね。そのほかに特長はありますか?


ワウテック K

そうですね、コストがリーズナブルで、ほかのクラウドストレージと併用しやすい点も特長のひとつではないでしょうか。

他社のクラウドストレージをみてみると、高機能で特定の業務に特化した専門的なサービスが多いんです。便利ですがその分価格も高くて、全社的な導入となるとコストがかかりすぎる可能性があります。

その点、WPS Cloud Proのクラウドストレージは機能構成がシンプルで、価格もリーズナブルです。だから、互いの長所を活かすハイブリッドな運用が作りやすいんです。

特定の業務は他社のクラウドストレージを使用し、日常の業務にはWPS Cloud Proのクラウドストレージ機能を活用するといったように、適材適所のハイブリッド運用を敷くことで、ITシステム全体のコスト最適化が図れます。

——たしかにWPS Cloud Proのクラウドストレージは、他社に比べて機能構成がシンプルな印象があります。機能がシンプルな分、価格もリーズナブルです。一方で、業務の要件によっては機能的に足りない部分がでてくる可能性もあるかと思いますが、そこは専門性の高い他社サービスとの併用によって補い合えるということですね。


ワウテック K

そうですね。例えば、WPS Cloud Proはストレージにアップロードできる1ファイルあたりの容量上限が1GBです。ですので、容量の大きなデータはアップロードできない場合があります。

このようなケースでも、別のサービスと組み合わせて使うことで、機能の不足部分を補うことができます。

社員全員が容量の大きなデータを扱うわけではないので、むしろこういったように、業務ごとにシステム構成の最適化を図れるほうがコスト面でメリットが大きいと感じます。

——なるほど。容量に関連して、全体で使えるデータ容量の多さはいかがですか?


ワウテック K

WPS Cloud Proは1ユーザーあたり100GBが使えるんですよね。そしてユーザーやチームごとに0GBから分配できる。分配が可能なので、困ることはないかと思います。

足りなくなった場合はIDを追加すればいいだけですし、むしろ料金形態がユーザー課金型で小回りを利かせやすいので、そこはありがたいポイントかなと思います。

ただし、従業員数が多い企業の場合は注意が必要かもしれません。

ユーザー課金型はユーザー数が増えるほど料金が上昇します。クラウドストレージは、契約データ容量に応じて料金が変化するデータ容量課金型のサービスも多く、それらのサービスは利用可能ユーザー数が無制限であることが一般的です。

ですので、従業員数が多い企業の場合、ユーザー課金型よりも、データ容量課金型のほうが費用対効果に優れている可能性があります。

どちらの料金モデルが自社に適しているのかは、事前に検討しておく必要があるかと思います。

続きとなる後編はこちら