企業活動を継続する上で、保存したデータのバックアップを取ることは重要です。
なぜなら、災害やサイバー攻撃により万が一データが消失してしまったとき、バックアップがあれば迅速にデータを復旧できるからです。迅速なデータ復旧は、事業の操業率回復に大きな効果を発揮します。
しかしバックアップと一口にいっても、さまざまな種類や方法が存在します。そのためバックアップが重要だとは思いつつも、「どのようなやり方があるのか」、「自社にはどのようなやり方が適しているのか」がわからないと悩む方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、バックアップの中でもポピュラーな「データバックアップ」とは何かについて解説します。
他のバックアップとの違いや具体的な方法、使用するツールの種類など詳しく説明していきますので、バックアップに関心のある方はぜひ参考にしてください。
目次
データバックアップとは
データバックアップとは、実際の業務で使用するファイルやデータのバックアップを取得することです。具体的には「オフィスソフトで作成されたドキュメントファイル」や、「撮影した写真データ」などのバックアップを取ることが該当します。
「バックアップ」という言葉を聞いて、一般的に思い浮かべるのは、この“データバックアップ”であることが多いのではないかと思います。
データバックアップでは、これらのデータを複製してコピーファイルを作成し、そのデータをバックアップ用のサーバーやシステムに保管します。
オリジナルのデータが破損・消失した場合でも、保管場所からコピーファイルを取り出すことで、データの速やかな復旧が可能です。
データバックアップとシステムバックアップの違い
システムバックアップとは、OSやミドルウェア、アプリケーションのバックアップを取得することです。「イメージバックアップ」と呼ばれることもあります。
データバックアップとの違いは、バックアップ対象が「システム」である点です。
これらのシステムはハードウェアの動作に大きく関与しています。
例えば自然災害でハードウェアが物理的に損傷し、交換が必要になったとします。新しいハードウェアに、0からシステム設定を行うのは手間のかかる作業です。
このときにシステムバックアップを取得していれば、新しいハードウェアに以前と同じ構成のシステムを簡単に引き継ぐことができ、復旧作業を速やかに完了させられます。
データバックアップ方法5選【ツール別】
データバックアップの方法を、使用するツール別に紹介します。
①HDD
HDDとは、ハードウェアに接続して使用する外部記憶装置です。HDDにハードウェア内のデータをコピー・保存しておくことでデータのバックアップが行えます。
ハードウェア内のデータが消えてしまっても、HDDに保存されたバックアップデータから復元が可能です。
低価格かつ大容量な点がメリットで、企業のバックアップツールとして長らく重宝されてきました。
デメリットは、装置内部の機械部品が駆動してデータの書き込みを行うため、物理的な衝撃に弱い点です。持ち運びや管理に注意を払う必要があります。
②SSD
HDDと同様に、ハードウェアに接続して使用する外部記憶装置です。
HDDとの違いは、フラッシュメモリを使用している点にあります。半導体を通じて読み書きを行うため、装置内部に駆動部品がなく、HDDと比べて物理的な衝撃に強いです。また駆動部品がない分、軽量かつ動作音が静かで、その点もSSDならではのメリットといえます。
デメリットは、HDDに比べて容量単価が高い傾向にあることと、長期保存に不向きであることの2つです。SSDはフラッシュメモリの性質上、長期間使用しないとデータが消失する可能性があります。耐用年数は3年程度が目安です。
③磁気テープ
磁気テープとは、テープ型の記録メディアです。カセットテープのようなテープ式となっており、使い方はHDDと同様です。バックアップ対象のデータを磁気テープにコピー・保存しておくことで、データのバックアップを取得します。
価格や転送速度、データ容量はHDDと大きく変わりませんが、耐用年数が30年と長い点がメリットです(一般的なHDDは数年ほど)。
④USBメモリ
USBメモリとは、USBコネクターに接続して使う小型の外部記憶装置です。USBコネクターにUSBメモリを指し、パソコン内のデータをコピーしておくことでデータのバックアップが取得できます。
USBメモリの強みは、コンパクトなサイズで持ち運びがしやすいことです。ポケットに入るほどのサイズ感で、携行性に優れています。
一方の弱みは、容量が少なく、データの転送速度が遅いことです。大容量のモデルや転送速度が早いモデルも発売されていますが、SSDに比べると劣る傾向にあります。大量のデータを保存すると、容量不足になったり、転送に時間がかかりすぎてしまったりする懸念があります。
USBメモリはどちらかといえばデータの持ち運びに適したタイプのツールです。一時的なバックアップツールとして活用するのであれば、十分使える可能性はありますが、データの保存やバックアップには不向きといえるでしょう。
⑤クラウドストレージ
クラウドストレージとは、インターネットを使ったファイルストレージです。インターネットを介してサーバーにアクセスし、そこでデータの保存・管理を行います。
クラウドストレージは、月契約で提供されるサブスクリプション型のサービスが一般的です。
提供会社側でデータのバックアップを取得しているため、ユーザー側は特にバックアップを意識しなくてよいというメリットがあります。
またバックアップに関連するシステムの管理が簡便になる点も、大きなメリットです。
サーバー用のハードウェア管理を自社で行う必要がなく、容量の拡張や機能の変更についても、提供会社に依頼するだけで簡単に実現できるので、バックアップにかかるシステム管理の負担を大きく軽減することができます。
データバックアップでは消失リスクの最小化が重要
データバックアップにおいては、データの消失リスクを最小限に抑えることが重要です。そのためには、バックアップしたデータの保管場所を複数の拠点にわけることが肝要となります。そうすることで、データ消失のリスクを分散することができます。
例えば、共有サーバーのデータをHDDにバックアップしていて、その共有サーバーとHDDを同じサーバールーム内で保管していたとします。
この運用だと、地震などの自然災害によってサーバールームが損壊した場合、バックアップデータもオリジナルデータもいっぺんに被害を受けて、全てのデータが一気に失われてしまう恐れがあります。
このようなリスクを避けるために、バックアップしたデータは別の拠点で保管することが求められます。保管場所を分けることで、一つの拠点が被災しデータが壊れても、無事だったもう一方の拠点からデータを復旧でき、データの消失リスクを小さく抑えられるからです。
データバックアップは“遠隔”がおすすめ
データ消失のリスクをさらに小さく抑えるためには、「遠隔バックアップ」を活用することをおすすめします。
遠隔バックアップとは、バックアップデータの保管場所を遠隔地に設定することです。
地震や洪水などの災害は、広範囲にわたって大きな被害をもたらします。
バックアップデータが同一施設内や、本拠地から近い地域で管理されていると、オリジナルデータと同じように被災してバックアップデータが消失してしまう恐れがあります。
このような事態を避けるために、バックアップデータのうち少なくとも1つは、遠方にある拠点で管理するのがおすすめです。
距離の目安としては、500〜1,000kmほど離れていると安心感があります。
東日本大震災では、地震の原因である断層の破壊範囲は長さ約450km・幅約200kmに達し、津波で浸水した面積は561平方キロメートル(東京23区の面積のおよそ9割に該当)にも及んだとされています(*1)。
このことから数十km程度の距離だと、同じように被災してしまう可能性が高いです。同県内や同地方内は避けるのが無難といえます。
*1 出典:内閣府|特集 東日本大震災
遠隔バックアップの方法
遠隔バックアップの方法は、SSDや磁気テープなど小型の記録媒体を使用している場合、「装置自体を物理的に別拠点へ輸送して保管する」といった方法があります。
中小企業を中心に多くの企業に採用されてきたシンプルな手法です。簡単に実践できますが、輸送費がかかる点や、バックアップ作業自体に人手を要する点が短所といえます。
手間やコストをかけない方法としておすすめなのは、「クラウドバックアップ」と呼ばれるクラウドを活用した方法です。
クラウドバックアップではインターネットを経由してデータを別拠点へ転送し、そこでデータを保管します。
先ほど紹介したクラウドストレージを使ったデータバックアップは、遠隔バックアップが一般的です。提供会社の多くがデータセンターを複数の拠点に設置し、それぞれを遠隔で管理しています。
バックアップ可能なクラウドストレージ「WPS Cloud Pro」
WPS Cloud Proは、データバックアップが取得できるクラウドストレージです。ファイルサーバーとして常用データの保管・管理ができることはもちろん、ストレージ内のデータはバックアップが可能となっています。
ストレージ内のデータは国内2箇所のデータセンターで管理されており、仮に一方のセンターが自然災害などによりダウンしても、もう一方のデータセンターが機能することで、サービスの可用性を維持します。
ぜひこの機会にWPS Cloud Proを活用してファイルサーバーのクラウド化と、データバックアップ体制の構築に取り組まれてみてはいかがでしょうか。