オフィスソフトを新しい製品に買い替えたり、リプレイスを検討するとき、特に気になることといえば「互換性」です。それまで使用していたオフィスソフトで作成したファイルが、新しいオフィスソフトで正しく動作するのか、表示崩れなどは起きないのか、気になる方は多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、やってみたシリーズ第2弾として、「オフィスソフトの互換性を検証してみた」をお届けします。
検証対象となるオフィスソフトは、Microsoft OfficeとWPS Cloud Proの2つです。
WPS Cloud Proとは、オフィス互換ソフト「WPS Officeシリーズ」の法人向けクラウド版です。WPS WriterやWPS Spreadsheetsなどのオフィス互換アプリをクラウド環境で使うことができます。
本記事では、「Microsoft Officeで作成したファイルを、WPS Cloud Proで開くとどうなるのか」、Word・Excel・PowerPointの3つのオフィスアプリで検証します。
目次
オフィスソフト互換性検証:概要
今回の互換性検証の概要は、上図の通りです。Microsoft Officeのオフィスアプリで作成したファイルを、WPS Cloud Proのアプリで開いたとき、関数のエラーやフォントの表示崩れ、レイアウトずれなどが起きないかを検証します。
検証環境の詳細
Microsoft Office | WPS Cloud Pro | |
---|---|---|
端末OS | Windows | macOS |
製品 | Microsoft Office Home and Business 2016 | WPS Cloud Pro |
環境 | デスクトップアプリ | デスクトップアプリ |
形式 | インストール版 | クラウド版 |
検証環境は上表の通りです。Microsoft Officeは、インストール版のMicrosoft Office Home and Business 2016をデスクトップアプリにて使用しました。WPS Cloud Proは、クラウド版をデスクトップアプリにて使用しています。
オフィスソフトにおける「インストール版(買い切り版)とクラウド版の違い」はこちらの記事をご参考ください。
WordとWPS Writerの互換性
まず始めに、文書作成ソフトの互換性を検証します。Microsoft Officeでは「Word(ワード)」が該当し、WPS Cloud Proでは「WPS Writer(ライター)」が該当します。
以下の項目について、互換性を検証します。
検証項目
・見出し・本文
・文字装飾(太字・下線・斜体・色付け)
・表
・ヘッダー・フッター
【全体感の比較】大きな崩れはない
まず始めに互換したときの全体感から確認してみます。左がWord、右がWPS Writerです。Wordで作成したファイルをWPS Writerで開き、それぞれの編集画面をキャプチャしました。
パッと見た印象では、フォントの表現に違いはあるものの、サイズやレイアウトが大きく崩れているといった現象は起きていないように思えます。
【見出し・本文】同じフォントを維持
表題や見出し、本文を確認してみます。今回、表題や見出しのフォントは「游ゴシック Light」を使用し、本文には「游明朝」を使用しました。
WPS Writerで開いたときでも同じフォントやフォントサイズが維持されており、表題や見出しといった構造もそのまま反映されていました。
【太字・下線・斜体・色付け】文字装飾もきちんと互換
次に、文字装飾の設定が互換されているかどうかを確認してみます。太字・アンダーライン(下線)・斜体・色付けの4項目を検証した結果が、上図です。いずれもきちんと反映されており、文字装飾の互換性を確認できました。
【表】色や結合の設定は正しく反映
続いて、表機能の互換性をチェックします。色設定の互換性を試すために、一番上の行は「背景色を黒・文字色を白」に設定しました。さらに、行と列の結合に不具合が起きないかを検証するために、表の3〜5行目と1列目を結合しています。
結果は、表全体の互換性にも不具合はなく、色設定や行と列の結合についてもそのまま反映されていました。
【ヘッダー・フッター】そのままの設定を維持
最後に、ヘッダーとフッターの設定を確認してみます。こちらもそのままの設定が維持されていることを確認できました。
【まとめ】高い互換性を確認できた
検証の結果、WordからWPS Writerへの互換性については、見出しの構造や、フォントや表機能の設定において、高い互換性を確認できました。ヘッダーやフッターといった機能もきちんと互換しており、報告書やプレスリリースなど、さまざまな文書に対応できるかと思われます。
ExcelとWPS Spreadsheetsの互換性
次に、表計算ソフトの互換性を検証します。Microsoft Officeでは「Excel(エクセル)」が該当し、WPS Cloud Proは「WPS Spreadsheets(スプレッドシート」が該当します。
表計算ソフトは用途に応じてさまざまな使い方ができるので、今回の検証では、
● 文書作成(見積書)
● データ集計(売上管理表・商品管理表)
の2パターンの使い方を例に挙げて、表示崩れや関数の動作、グラフの表示をチェックしていきます。
パターン①文書作成(例:見積書)時の互換性
見積書を作成した場合の互換性から検証してみます。
検証項目は以下の通りです。
検証項目
・ドロップダウンリスト
・演算
・シート保護
【全体感の比較】見た目上は問題なし
全体感から確認してみます。左がExcel、右がWPS Spreadsheetsです。テキストやセルの色、結合されたセルまできちんと反映されており、見た目上は見積書として互換していることがわかります。
【ドロップダウンリスト】Excel側の設定がそのまま引き継ぎ
選択可能な項目をリストとしてセルに設定できる「ドロップダウンリスト」。今回の検証では、見積書の項目に対する形式をドロップダウンリストとして設定してみました。
この機能もExcelで設定した内容がそのまま引き継がれており、きちんと互換していることが確認できました。
【演算】数式が反映され問題なく動作
表計算ソフトの要ともいえる「演算」機能。見積書のように「金額の計算」が求められる文書の作成においては、特に重宝される機能です。この検証では、項目あたりの金額を算出するために、項目の数量と金額を掛け算する数式を入れてみました。
WPS SpreadsheetsでもExcelで用いた数式がそのまま引き継がれており、演算機能がきちんと動作していることが確認できました。
【シート保護】エラーメッセージも表示
表計算ソフトには、シートの保護機能が付いています。シート全体やシート内の特定のセルを編集できないように保護できる機能です。
誤編集や勝手なシートの改変を防止するために用いられる機能であり、見積書であれば枠線や関数を入れている箇所など、担当者が編集する必要のない部分を保護する目的で活用するのが一般的です。
シートの保護機能が互換されているかを確認した結果が、上図になります。Excelの設定がWPS Spreadsheetsにも反映されていることが確認できました。
保護されている箇所を編集しようとすると、上図のように「シートは保護されています」といった旨のメッセージが表示され、編集ができないようになっています。このように、シートの保護機能も、問題なく反映されていることが確認できました。
パターン②データ集計(例:売上管理表・商品管理表)時の互換性
続いて、データ集計を行った場合の互換性を、売上管理表と商品管理表を例として検証してみます。
検証項目は以下の通りです。
検証項目
・売上管理表:グラフ
・売上管理表:SUM関数
・商品管理表:IF関数
・商品管理表:VLOOKUP関数
【売上管理表:グラフ】同じものが反映
上図の左がExcelで作成した売上管理表です。右が、そのファイルをWPS Spreadsheetsで開いたときの画面になります。この売上管理表は、地域の店舗ごとの売上を月次でまとめた表になっており、表の下部には、店舗ごとの月次売上推移がグラフとして挿入されています。
セル内に入力したテキストやセルの色付けはきちんと反映されており、グラフについても、ほとんど同じ見た目のものがWPS Spreadsheetsに引き継がれていることがわかります。
【売上管理表:SUM関数】数式の崩れなし
SUM関数は、指定した範囲内の合計値を求める関数です。月次の合計売上金額を「合計/月」のセルに算出するために、SUM関数を使用しました。
上図の通り、Excelで作成したSUM関数は、WPS Spreadsheetsに互換後も問題なく反映されており、数式が崩れているといったこともありませんでした。
【商品管理表:VLOOKUP関数】計算結果にエラーなし
次は、商品管理表を例にしてVLOOKUP関数の互換性を確認します。上図では、左側にその月の売上管理表が入力されており、右側に商品管理表が入力されています。
VLOOKUP関数は、指定した条件に対応するセルを見つけ出してくれる関数です。指定された範囲内を縦方向に検索し、検索値と列番号に対応する値を返します。
VLOOKUP関数を使うことで、「商品ID」を基準に、商品管理表から売上管理表へ「価格」を自動抽出することができます。
上図のVLOOKUP関数は、売上管理表において、商品ID(検索値)に応じた価格を、商品管理表(検索範囲)から抽出してくるといった意味を持ちます。
WPS Spreadsheetsに互換後も、数式は正しく入力されていました。計算結果にエラーなども起きておらず、VLOOKUP関数の互換性を確認できました。
【商品管理表:IF関数】Excelと同様の計算結果
最後に確認するのは、IF関数の互換性です。IF関数は、条件によって返す値を変化させることができる関数です。今回は、総売上が目標を上回っていたら「◯」、そうでなければ「×」と表示させるように設定しました。
上図の通り、互換後も数式はそのまま反映されており、Excelと同様の計算結果が表示されました。
【まとめ】文書作成、データ集計ともに問題なく互換
検証の結果、ExcelからWPS Spreadsheetsへの互換性について、セル内のテキストやセルの色付け、ドロップダウンリストやグラフ、SUM関数やVLOOKUP関数などの要素においては、表示崩れや関数のエラーは起きないことが確認できました。
演算の数式も不具合なく引き継ぐことができており、今回検証した範囲内であれば、文書作成だけでなくデータ集計の業務も、特段の障害を起こすことなく、引き継げることが予測できます。
【補足】Excelのマクロ機能について
今回の検証には、Excelの「マクロ機能」が含まれていません。
WPS Cloud ProのWPS Spreadsheetsは、マクロの利用について動作保証外となっているためです。ユーザーの環境によっては利用できるケースもありますが、その動作については保証外であるため、基本的にWPS Cloud Proでマクロは利用できないということになります。
したがって、Excelのマクロにおける互換性については、WPS Cloud Proは「有していない」と考えるのが、買い替えやリプレイスを検討する上では妥当といえるでしょう。
PowerPointとWPS Presentationの互換性
最後に、プレゼンテーションソフトである「PowerPoint」と「WPS Presentation(プレゼンテーション)」の互換性を検証します。
Microsoft OfficeのPowerPointで作成したファイルを、WPS Cloud ProのWPS Presentationで開いたときに、表示崩れが起きないかどうか、4枚のスライドを比較して確認します。
検証項目は以下の通りです。
検証項目
・表紙
・フォント
・図形を交えたスライド
・図形と写真を交えたスライド
【全体感の比較】
始めに、全体感を確認してみます。アプリを立ち上げたときの画面は、それぞれこのようになりました。次節から、各スライドをもとにフォントや図形の互換性を確認していきます。
【表紙】“位置ずれ”などはなし
表紙は、上図のような形になりました。テキストと写真を使った表紙となっており、PowerPointからWPS Presentationへ互換したあとも、要素の位置がずれたり、表示エラーが起きたりはしておらず、各要素が問題なく反映されていることがわかります。
【フォント】切り返しの段落に違いあり。設定は正しく引き継ぎ
このスライドでは、フォントの互換性を検証しました。タイトルには「游ゴシック Light 28pt」を用い、本文の各フォントは「メイリオ」「游明朝」「MS Pゴシック」の3種類を16ptのサイズで設定。
文字幅の違いから段落を折り返すタイミングに多少の違いはありますが、PowerPointの設定が、そのままWPS Presentationに引き継がれていることがわかります。このことから、今回検証したフォントであれば互換可能であるといえるでしょう。
【図形を交えたスライド】問題なく互換
続いて、図形を交えたスライドの場合、どうなるのかを試してみます。丸の図形にテキストボックスを重ね、その下に説明文のようなものをいれて、3つ並べてみました。
図形からテキストがはみ出したり、並びがずれたりといった現象は起きておらず、きちんと互換していることがわかりました。
【図形と写真を交えたスライド】複雑なレイアウトもそのまま反映
最後に、図形と写真を交えた、先ほどより少し複雑なスライドの互換性を検証してみます。四角図形や線図形を使ってプロジェクトツリーを作成し、さらに情報の一部を補足するものとして、写真を使ったプロフィールエリアを挿入してみました。
複数の図形と写真、テキストを組み合わせて作成したスライドですが、各要素にずれやフォントのエラーなども起きておらず、レイアウトもそのまま反映されています。こういった多少複雑なスライドであっても、互換性があることが確認できました。
【まとめ】複数の要素を組み合わせたスライドでもほぼ見た目通りに互換
検証の結果、PowerPointからWPS Presentationへの互換性について、図形や写真、テキストを用いた少し複雑なスライドであっても、互換可能であることがわかりました。
また、フォントに関しても、「游ゴシック」「メイリオ」「游明朝」「MS Pゴシック」の4種類は、多少の文字幅の違いはあれど、ほとんど見た目の通り反映させることができます。社外用のプレゼン資料はもちろん、社内資料の作成にも幅広く活用できるでしょう。
WPS Cloud ProとMicrosoft Officeの互換性は基礎的な使い方なら問題なし
検証の結果、Microsoft OfficeとWPS Cloud Proの互換性を確認することができました。フォントや図形、グラフや関数など、各種オフィスアプリのさまざまな要素を試しましたが、いずれもきちんと互換されていました。
ただし、今回の検証項目は、あくまでも基礎的な使い方にもとづいた内容なので、より高度な運用を行っている場合、互換性に何らかの課題を感じる場面があるかもしれません。
特に、ExcelのマクロはWPS Cloud Proで利用することができないので、買い替えやリプレイス時には運用を再検討する必要があります。
また、関数やフォントの種類によっては、互換時にエラーや表示崩れが生じる可能性もあり、エラーの種類によっては、ファイルの内容を大きく改変しなくてはならない場合もあるでしょう。
だからこそ、オフィスソフトの買い替えやリプレイスを検討するときは、無料トライアルなどを活用して、事前に、実際の業務レベルで互換性を確かめておくことが大切です。
オフィスソフトの買い替えやリプレイス、ご相談ください!
WPS Cloud Proでは、サービスの導入をご検討いただく際に懸念される事項について、専門のスタッフが相談を承っております。
「いま使っているオフィスソフトのサポート期限が切れそうなので、WPS Cloud Proに買い替えを検討している。しかし、問題なく切り替えられるかどうか、懸念があるので相談したい」
「コスト見直しのためにオフィスソフトのリプレイスを検討しているが、現在の業務をそのまま引き継げるのかどうか、相談したい」
上記のような、さまざまなお悩みについて幅広く相談を承っておりますので、ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
また、無料トライアルについても、随時承っております。こちらのフォームよりお申し込みください。
* 本検証結果は今回の検証環境にもとづいたものです。利用するOSや端末、オフィスソフト製品の種類によっては、同様の結果が得られない可能性があることをご留意ください。