データファイルの保管や共有に便利なクラウドストレージ。従来のビジネスで主流だったオンプレミス型の共有サーバーに比べて、アクセス性やファイルの共有性に優れているのが特徴です。その利便性の高さから、多くの企業で導入が進んでいます。
クラウドストレージは無料プランで利用できるサービスも多く提供されており、代表的なものでいえばGoogle DriveやOneDriveなどが挙げられます。
無料で使えるのはありがたいことですが、これらの無料版クラウドストレージをビジネスで実用的に使うことは現実的にみて可能なのでしょうか?
今回のコラムでは、無料版クラウドストレージの業務利用について解説します。「無料版クラウドストレージを仕事で使うことはできるのか」、「仮に利用するとした場合、どのような点に注意する必要があるのか」などについて説明します。
目次
無料版クラウドストレージを仕事で使うことは難しい
結論からいえば、無料版として提供されているクラウドストレージを業務に使うことは難しいといえます。
理由は以下の4つです。
- セキュリティ対策が不十分になりやすい
- 企業ポリシーに不適格な可能性が高い
- いざというときサポートを受けられない
- 容量や利用可能ユーザー数が少ない
次のパートからそれぞれの内容を詳しく解説します。
①セキュリティ対策が不十分になりやすい
1つ目の理由は、セキュリティ対策が不十分になりやすいことです。無料版クラウドストレージは、有料版に比べて使用できる機能が制限されています。
利用可能なデータ容量数が少なかったり、有効化できるアカウントの数が1つまでだったりなどです。
これらと同様にセキュリティに関する機能も制限されているケースが多く、利用者側で思うようなセキュリティ対策を実行できない可能性があります。
たとえば、クラウドストレージのセキュリティ対策として、以下の機能が挙げられます。
- アクセスログの取得・解析
- ダウンロード制限
- ファイル・通信の暗号化
- バックアップの取得・一定期間の保持
- ファイルの復元
- 認証制限
無料版クラウドストレージの場合、これらのセキュリティ対策に役立つ機能を十分に使えない可能性が高いです。
特に無料プランは個人(1名)を想定した設計になっていることが多く、法人利用に必須である「ユーザー管理機能」が存在しないこともあります。
さらに個人向けのクラウドストレージはトラブルが発生したときに会社として追跡が困難であるだけでなく、ユーザーのプライベートな情報を紐づいてしまい、思わぬ経路から情報流出が起きるリスクも考えられます。
②企業ポリシーに不適格な可能性が高い
2つ目は、企業ポリシーに不適格な可能性が高いということです。企業ポリシーとは、セキュリティマネジメントにあたって企業が掲げる方針や行動指針を指します。
利用したいITツールのセキュリティ環境が、企業ポリシーにおける要求水準を満たしていない場合、どんなに便利であっても利用することはできません。
先ほど挙げたように無料版のクラウドストレージは個人向けに作られていることが多く、その場合セキュリティに関する機能も十分に使えない可能性が高いです。そのため、セキュリティに厳しい企業の場合、企業ポリシーへの適格性という観点から利用を禁じられてしまう可能性があります。
③サポートが受けられない
3つ目は、トラブルがあったときや技術的なことで困ったときにサポートが受けられない点です。
無料版クラウドストレージは個人利用という形で提供されるサービスが多く、有料サービスのように専門の担当者がつくことは稀です。
そのため、何かトラブルが起きた際は自力で対処しなくてはなりません。
技術的なことや活用方法についてわからないことがあっても、自分でサポートサイトやFAQなどをみて対応しなくてはいけないのです。
そのため、万が一情報漏えいなどのセキュリティトラブルが発生した場合、スピーディな対応が取れない恐れがあります。
④容量や利用可能ユーザー数が少ない
4つ目は、保存できるデータ容量や利用可能なユーザー数が少ない点です。無料版クラウドストレージの場合、有料プランよりも使えるデータ容量が少ないことが多く、容量の大きなデータファイルをたくさん保存する場合、容量が足りない可能性があります。
特に高画質な画像データや動画、建設業でよく使われるCADデータなどは1つのファイルで1GBに達することも多いので、それらを扱う場合は容量不足に陥ってしまう可能性が高いでしょう。
また利用可能ユーザー数についても、「無料プランは3名まで」など制限があるケースが少なくありません。
クラウドストレージはファイルを扱うすべての従業員が利用するITツールです。全体にアカウントを配布できない場合、そのサービスを業務で利用することは難しいでしょう。
企業が無料版クラウドストレージを活用する際の注意点
これまで見てきたように、無料版クラウドストレージを仕事で使うことはセキュリティ維持や業務実用性の観点から困難といえます。
しかし、だからといって企業が無料版のクラウドストレージを絶対に使えないというわけではありません。
いくつかのポイントを押さえることで、無料版クラウドストレージでもビジネスに利用することができます。
企業が無料版クラウドストレージを活用する際の注意点として、以下の3つを解説します。
- 個人版を使うならきちんと情シスに承諾を得る
- 利用範囲を限定する
- 有料版へのアップグレードを視野に入れておく
①個人版を使うならきちんと情シスに利用許可を得る
個人版の無料アカウントとして提供されているクラウドストレージを使う場合は、きちんと情報システム部に確認を取り、利用許可を得るようにしましょう。
会社に認可されていないITサービスやITツールを使うことはシャドーITと呼ばれ、セキュリティマネジメントにおいて好ましくない状態とされています。
情シスの利用許可が降りたのであれば、企業ポリシーの要求水準を満たしたということであり、安心して業務に使えます。
また安全に使うためのアドバイスや、利用するために必要な条件・設定を教えてもらえることもあるので、個人版クラウドストレージを使いたいと思ったときには、まず情シスに確認してみるのがよいでしょう。
②利用範囲を限定する
利用する業務や関係者の範囲を限定することで、セキュリティを補うことができます。たとえば、以下のような使い方が挙げられます。
- 個人が利用するファイルのみ保管し、共有リンクを使ったファイル共有はしない
- 使用期間と利用するチームメンバーを明確にし、その中でのみ使う
- ファイルのオーナーは必ず情報システム部門の人間を設定する
このようにクラウドストレージの使い方や利用する業務、使用するメンバーを限定することで、セキュリティトラブルの発生リスクを小さくすることが可能です。
③有料版へのプランアップを視野に入れておく
クラウドストレージをビジネスで本格的に使用する予定があるなら、有料版へのプランアップも視野に入れた上で、無料版サービスを比較・検討することをおすすめします。
なぜなら、利用している無料版サービスの有料プランが自社の条件に合わなかった場合、データ移行の手間が発生してしまうからです。
有料版への切り替えがスムーズに行えるように、無料プランのサービス内容だけでなく、有料プランのサービス内容も評価項目に含めてサービスを比較検討しましょう。
まとめ
いかがでしょうか。今回のコラムでは、「無料版クラウドストレージは仕事に使えるのかどうか?」について解説しました。
まとめると、無料版クラウドストレージは以下の理由から仕事で使うことは難しいといえます。
- セキュリティ対策が不十分になりやすい
- 企業ポリシーに不適格な可能性が高い
- いざというときサポートを受けられない
- 容量や利用可能ユーザー数が少ない
しかし、だからといって必ずしも使えないというわけではなく、以下の点に注意することで無料版クラウドストレージであっても仕事で使うことができます。
- 個人版を使うならきちんと情シスに承諾を得る
- 限られた範囲で使う
- 有料版へのアップグレードを視野に入れておく
無料版クラウドストレージを仕事で使ってみたいという企業は、まずこちらのポイントに注意して、具体的なサービスを探されてみてはいかがでしょうか。
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