現代社会のあらゆる分野でクラウドの活用が進んでおり、ビジネスで使う文書の作成や管理にも同様の流れが訪れています。従来はPCアプリで編集作業をおこなうことが一般的でしたが、いまはネットに接続してクラウドで作業するユーザーが増えました。
クラウドの強みのひとつは、他のユーザーとリアルタイムでコラボレーションを図れることです。ビジネスの文書管理におけるクラウド活用では、ITツールとして「共同編集ツール」に注目が集まっています。
今回のコラムでは、その共同編集ツールについて紹介します。共同編集ツールとは何か。企業が活用することで得られるメリットは何か。おすすめのサービスはどれか。共同編集ツールについて、基礎知識を含めた幅広い情報をまとめました。
共同編集ツールに興味のある方はぜひ参考にしてください。
※価格など各製品の情報は2023年5月時点のものです。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
目次
共同編集ツールとは?
共同編集ツールとは、ひとつの文書を複数のユーザーがインターネットを介して共同で編集できるツールのことです。
従来、ビジネスで扱われる文書は「共有サーバーに格納する」もしくは「メールで送る」といった方法で関係者へ共有されてきました。
たとえば、ライターが編集者に原稿の確認を依頼するとき、「Wordファイルをメールで送る」というようなことが具体例として挙げられます。
共同編集ツールでは、従来のようにファイル自体をやり取りするのではなく、ファイルをインターネット上で共有可能な状態にし、その中で編集や更新などの操作を実行します。
そのため、従来では不可能だった「文書を複数のユーザーが共同で同時に編集すること」が可能です。
日常の業務を例にあげるとすれば、売上管理表というExcelデータがあり、営業部のメンバー全員が定期的な入力を義務づけられているとします。
共同編集ツールを活用すれば、ひとつのファイルをメンバー全員で同時に編集できるので、売上管理表への入力作業を効率よく進めることができます。
共同編集ツールを企業が活用する3つのメリット
共同編集ツールを活用することで企業が得られるメリットを、3つ紹介します。
メリット①編集作業を同時におこなえる
1つ目は、編集作業を同時におこなえることです。誰かが編集を終えるまで順番を待つ必要がなく、ユーザー同士が同時に作業がおこなえるので、ファイルの編集作業をスピーディにおこなうことができます。
メリット②ファイルの送受信が不要になる
2つ目は、ファイルの送受信が不要になることです。共同編集ツールはインターネット上でファイルを共有するので、共有時に必要となるものは共有用のURLリンクのみ。
メールにファイルを添付したりする必要はなく、リンクを送るだけでファイルを共有することができます。メールでありがちな「容量が大きくて送れない」というトラブルも、共同編集ツールであれば心配無用です。
メリット③「修正→提出」をひとつのファイルで完結できる
3つ目は、「修正→提出」をひとつのファイルで完結できることです。共有ファイルのみで作業が完結するので、修正と提出のやり取りでファイルの往復が発生しません。そのため、各自がローカルでファイルを保存して更新するといった対応が不要となり、ひとつの共有ファイルのみで文書を完成させることができます。
共同編集ツールのおすすめサービス5選【法人向け】
製品名 | 特徴 |
---|---|
WPS Cloud Pro | オフィス互換ソフト・PDF編集機能・クラウドストレージが使える法人向けのクラウド型オフィスソフト。 |
Microsoft 365 | 「Officeシリーズ」の法人向けサブスクリプション版。共同編集機能ではTeamsとシームレスに連携できる。 |
Google Workspace | Googleドキュメントなどのオフィスアプリが利用可能。Webブラウザベースの設計で共同編集の各機能が使いやすい。 |
Qast | ナレッジ共有に特化した共同編集ツール。社内版知恵袋。 |
Cacoo | 共同編集ツールの中でも作図に特化。フローチャートやマインドマップなどテンプレートが豊富。 |
ビジネスにさまざまなメリットをもたらす共同編集ツールですが、市場にはさまざまなサービスが存在します。その中でも、特におすすめしたいサービスを5つピックアップしました。
①WPS Cloud Pro
「WPS Cloud Pro(ダブルピーエスクラウドプロ)」は、「WPS Officeシリーズ」などビジネスITソリューションの販売事業を営むキングソフト株式会社が提供する、法人向けのクラウド型オフィスソフトです。
WPS Cloud Proでは、Microsoft Officeと互換性を持った3種類のオフィス互換ソフト(文書作成、スライド作成、表計算)と、1ユーザーあたり100GBのクラウドストレージが使用できます。
クラウドストレージにアップロードされたファイルは、オフィス互換ソフトを用いて共同編集が可能です。
またWPS Cloud Proはオフィス互換ソフトのほかにPDF編集機能も備えており、さまざまな文書の共同編集に対応しています。
文書の作成から編集、共有や保存、チームでの同時編集まで、WPS Cloud Proひとつでおこなうことができます。
料金プラン
ライトプラン | 300円 |
②Microsoft 365
「Microsoft 365(マイクロソフトサンロクゴ)」は、マイクロソフト社が提供するクラウド型のオフィススイートです。
「Officeシリーズ」の法人向けサブスクリプション版であり、WordやExcelなどのOfficeアプリケーションはもちろん、クラウドストレージのOneDriveや、メーラーのOutlook、クラウド型メモ帳のOneNoteなど、さまざまなアプリを使うことができます。
Microsoft365では、OneDriveに保存されたファイルを共同で編集することが可能です。
共同編集ツールとして特に優れている点には、Microsoft Teamsとシームレスに連携できる点が挙げられます。
Microsoft Teamsのチャットで共有したOfficeドキュメントは、OneDriveに自動でアップロードされ、共有されたメンバーで共同編集がおこなえるようになります。
またTeams上で共有されたファイルはローカルのデスクトップアプリで操作可能です。共有から共同編集までアプリ横断など必要な操作が少なく、スピーディに共同編集がおこなえます。
料金プラン
Microsoft 365 Business Basic | 750円 |
Microsoft 365 Apps for business | 1,030円 |
Microsoft 365 Business Standard | 1,560円 |
Microsoft 365 Business Premium | 2,750円 |
③GoogleWorkspace
「GoogleWorkspace(グーグルワークスペース)」は、Google社が提供するWebブラウザベースのオフィススイートです。GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートといったオフィスアプリケーションのほか、Googleドライブというクラウドストレージを搭載しており、ストレージ上のファイルは、オフィスアプリで共同編集をおこなうことができます。
またメーラーのGmailやWeb会議システムのGoogleMeetなど、ビジネスに欠かせないアプリも幅広く備えており、共同編集ツールとしてだけでなく、グループウェアとしても活用できる多機能な製品です。
使えるアプリの種類はMicrosoft365と似ていますが、違いを挙げるとすれば、ツールを利用する際の環境がブラウザを前提としている点があります。
Microsoft365や、はじめに紹介したWPS Cloud Proは、利用環境をデスクトップアプリ・モバイルアプリ・Webブラウザのいずれかから選択可能です。
一方のGoogleWorkspaceは、基本的にWebブラウザから利用されることを想定した作りになっています。
クラウド環境での利用を優先した設計である分、共同編集における作業のしやすさや、使える機能の幅広さは随一です。
しかし一方で、Officeシリーズなどでデスクトップアプリの操作に慣れている方は、ブラウザでの操作に戸惑いを覚える可能性もあり、使い手の好みによっては製品として合わないこともあるでしょう。
料金プラン
Business Starter | 680円 |
Business Standard | 1,360円 |
Business Plus | 2,040円 |
④Qast
「Qast(キャスト)」は、2016年に設立されたany株式会社が提供するナレッジ経営クラウドです。共同編集ツールの中でも組織内のナレッジを共有することに特化したサービスとなっており、社内の疑問を解決する「Q&A(社内版知恵袋)」や、ノウハウを共有する場となる「社内版Wikipedia」といった機能を備えています。
文書投稿時のUIや使える機能はオフィスアプリのWordに似たシンプルな設計ですが、マークダウン機能が使えたりファイルを添付できたりと、細かい部分で使い勝手がいいことが特徴です。
製品としては、ITに苦手意識のある方でも使いやすいように作られており、さらに専門のコンサルタントが導入や活用を支援してくれるので、ITツールの利用浸透に懸念がある企業でも利用しやすいサービスとなっています。
Qast単体ではオフィス系ドキュメントを編集することができないので、「実際の編集作業はオフィスアプリを使用し、チーム内での共有やコミュニケーションは、Qastのファイル添付機能でおこなう」といったように、編集と共有の場を区別した活用がおすすめです。
料金プラン
スタンダードプラン | ー |
エンタープライズプラン | ー |
⑤Cacoo
「Cacoo(カクー)」は、プロジェクト管理ツール「Backlog」などのチームコラボレーションツールの開発・提供事業をおこなう株式会社ヌーラボが提供する、クラウド作図ツールです。
Cacooは、図を作成することに特化した共同編集ツールとなっています。たとえば、Webサイトのワイヤーフレームや業務のフローチャート、マインドマップや組織図といった図を描くことができ、作成した図をメンバー同士でリンクを使って共有することが可能です。
Cacooの特徴は、テンプレートが豊富に用意されていることにあります。フローチャートやマインドマップなどビジネスで汎用性の高い基礎的なものに加え、ネットワーク構成図やデータベース設計図など、エンジニア向けのテンプレートも充実しています。
テンプレートには、その図を作成するのに便利なアイコンや図形がプリセットとして用意されており、簡単にきれいな図を作ることができます。
紹介したように、Cacooは図の作成に特化した共同編集ツールです。活用できる業務が限定的ではあるものの、こういった図を作成する業務が定常化しているようなケースでは、非常に便利な共同編集ツールであるといえるでしょう。
料金プラン
プロプラン | 660円 |
チームプラン | 1,980円 *3ユーザー |
共同編集ツールを活用してリアルタイムに連携
共同編集ツールを活用することで、チームの連携を効率化することができます。資料作成やファイル管理について、「共有」の面で課題を感じている企業はぜひ活用を検討されてみてはいかがでしょうか。